神経経済学とは?
こんにちは!
気付けば2020年5月も半ばを過ぎました。
世界はコロナという誰も予期していなかった(ビルゲイツは予期していた😮)事態ですが、ニューノーマルな日々を過ごしていくそんな日々ですね。
今回は私が専門で研究を行っている神経経済学について紹介したいと思います。
私自身もまだまだ勉強中ではありますが日本であまり研究されていない分野ですので、少しでも多くの人にそういう分野があることを知ってもらえたらなと思ってます。
神経経済学とは一言で言うと、
「人間の意思決定を神経の側面から説明する」
ことです。
そもそも経済学って何か。大学に入るまで(いや大学4年生の途中まで)経済学とは何か私にもわかりませんでした。経済学とは人の行動を説明するための合理的仮説に基づいた理論です。そこから派生したのが行動経済学です。行動経済学と古典的経済学の大きな違いは人間の合理性を仮定しているかいないか。その行動経済学からさらに派生したのが神経経済学です。つまり、経済学というのは人間の行動を説明するために色々と工夫を重ね進み続けているということです。しかしここで気をつけないといけないことはパラレルワールドのようにどんどん分岐しているので、どれが正しいとか正しくないとかいう問題ではありません。行動経済学が出てきたからと言って、古典的経済学が正しくないわけではありません。よく古典的経済学vs行動経済学という風に捉えられていることも多いですが、私はどっちも素晴らしい理論だと思っています。あくまで個人的な意見です。
話を戻します。
神経経済学についてここで一つ論文をあげたいと思います。
Neural Predictors of Purchases
Brian Knutson, Scott Rick, G.Elliott Wimmer, Drazen Prelec, and George Loewenstein
この論文は人が商品を購買するか否かをfMRIを用いて計測することができるかを研究しました。
今まで古典的経済学では人々は商品を見て、潜在的な利益を自身で決めて、その上で価格を見て、予想された利益と実際の価格を比較して、購入をするかしないかの判断をすると考えられていました。しかし、マイルやクレジットカードなどの仕組みが導入されたことにより人々は購入時に金額が提示される状況だけでなく、実質0円で買うことができるなどといった状況もあります。そのことも踏まえて考えられたモデルが行動経済学における hedonic competitionです。(Prelec and Loewenstein, 1998)
これは"取得の即時の喜び"と"支払いの即時の痛み"との間のヘドニック競争を指します。つまり、購入時の利益と損失のトレードオフから購入するかしないかを決定しているということです。
この理論は神経経済学の側面からも同じように捉えることができます。
この研究以前に以下のことは前提としてわかっていました。
- 側坐核(NAcc)は利得予測と相関している
- 利益の結果により内側前頭前野(mPFC)が活性化する
→利得予測の誤差と相関 - 島皮質(Insula)の活性化は損失予測に重要な役割を果たすという仮説
(Paulus and Stein, 2006)
これらを踏まえて、この研究では以下の実験が行われました。
被験者は図にあるようにまず4秒間商品を見ます。その後の4秒で価格を見ます。次の4秒で買うか買わないかを判断してもらいます。とても単純なゲームです。
このゲームの際に先ほど出てきた、側坐核(NAcc)と内側前頭前野(mPFC)と島皮質(Insula)の三つの部分においてどれぐらい活性化するかを計測しました。
結果、被験者が商品を購入するかどうかは脳の三つの部分の活性化具合を説明変数としたロジスティック回帰を用いて予測できることがわかりました。
つまり、利得と損失に関連する異なる脳領域の活性化は、購買決定に先行しており、購買決定を予測するために利用できることが示唆されました。
この研究でも明らかになったように人の行動は神経科学の側面からも説明することができます!
神経経済学はこれから先今まで以上に注目される分野になっていくと思います。それはなぜかというと、IoT技術の進化などによりどんどん生体情報の収集がいろいろな場面で行われていくことが増えているからです。生体情報が集まれば集まるほどこのような神経経済学の知見を社会に生かすことができると思います。
少しでも神経経済学の魅力が伝わっていたら幸いです😊
より深く知りたい方は以下の本が有名です!